【十人桐色】#13 『私が尊敬する人と陸上を続ける理由』入野翔太

はじめまして。今回の十人桐色の記事を担当させていただくことになりました。大学院1年中長距離ブロック、長距離パート所属の入野翔太と申します。

私は、今年度から筑波大学大学院の環境科学学位プログラムに入学しました。昨年度までは東京学芸大学で4年間を過ごしていました。今回は、私が大学院に入学後も長距離ブロックで競技を続けようと思った理由と、競技人生のラストイヤーに対する思いをテーマに記事を書きたいと思います。

 

中長距離ブロックの部員から、なぜ大学院でも競技を続けているのか?という質問をよくされます。筑波大学というトップレベルの環境でチャレンジしたいという思いと、院生にも出場機会のある全日本大学駅伝の出場を目指せることが理由となりますが、根本的には陸上が自身の成長の場であるということが挙げられます。陸上競技は結果が記録として現れるため、記録の向上から成長を感じやすいという点はあるかもしれませんが、陸上競技に限らず、全てのスポーツ、学問、芸術を通して成長を感じることはできます。私がなぜ陸上競技、とりわけ長距離走を選択して競技を続けてきたのかについて掘り下げると、ある1人の人物が大きな理由となっているので紹介したいと思います。

 

 その人物の名前は森俊貴(もり としき)です。通称モリトシです。私とモリトシは地元栃木の小中学校が同じで、今でも交友を持っています。私は学生ですが、モリトシはサッカー選手です。モリトシは小学校から高校まで栃木県のプロサッカークラブ栃木SCのアカデミー選手として活躍し、その後法政大学に入学、法政大ではレギュラーメンバーとして総理大臣杯・インカレ優勝、天皇杯ベスト16進出に大きく貢献しました。卒業後は、下部組織出身者として栃木SCに加入し、2021シーズンは背番号10番を背負いプロで活躍を続けています。

 

私も小中学校は部活でサッカーをしていましたが、彼に対しては幼いころから抜群のサッカーセンスを感じ、サッカーでは敵わないなと思っていました。小学生のころの私は、走ることに対しては自信があり、足が速い=かっこいいという考えだったので、足の速さで1番になって目立ちたいという子どもでした。しかし、運動会、持久走大会、地元のマラソン大会など、走る大会すべてにおいて唯一敵わなかった同級生がモリトシでした。モリトシはサッカーだけでなく足も私より上でした。どうしてもモリトシに勝ちたいという悔しさと、彼がサッカーをしている分、自分がたくさん走れば勝てるという思いからランニングの練習を始めたことが私の長距離走の原点です。

 

 

 

 中学生になり、サッカー部に所属していましたが、サッカーのセンスがあるとは思っていなかったので、卒業後はスポーツに本格的に取り組むことはないだろうと考えていました。中学では、地区の陸上競技大会や駅伝大会が開催される時期のみ生徒が招集され練習をしており、私とモリトシも大会に参加していました。やはり私はモリトシに勝ちたかったので、放課後、彼がアカデミーでサッカーをしている時間に町内をランニングする自主練習をしていました。1 年生ではまだモリトシに負けていましたが、2年生になり、地区の陸上競技大会の3000m競争で初めてモリトシに勝つことができました。このとき、私は長距離走に対する思いに転機を迎えます。走り終わり、疲れて倒れ果てていた私にモリトシは一番に駆け寄ってきておめでとうと声をかけてくれたのです。私の中で彼が“勝ちたい相手”から“尊敬する人物”に変わった瞬間でした。陸上ならモリトシに勝つことができるという自信を得たこともありますが、それ以降、尊敬する彼がサッカーの道を進む分、私は陸上の道で同じように頑張りたいという意識が芽生えたことが競技継続に大きく影響しています。

紹介したように、彼は形容しがたい成長と実績を重ねています。私の競技実績は彼に及びませんが、彼の活躍する姿を知り、会ったり連絡を取ったりしたときに「お互い頑張ろう、応援しているよ」と言い合えることが、私も頑張ろうと思える大きな原動力の1つになっています。

 

今年は学生最後の年を迎え、学生スポーツとしての陸上競技もラストイヤーを迎えます。また、大学では箱根駅伝出走を大きな目標にしてきましたが、院生となった私は箱根駅伝に出場することはできません。しかし、ラストイヤーであることや箱根駅伝に出場できないことを特別視する思いはなく、筑波大学という環境で本気で箱根駅伝出場を目指す長距離パートの部員たちと同じ方向を向いて練習に取り組むことが、私にとって長距離走の道を進むことであり自身の成長につながると考えています。

 

 

最後になりますが、筑波大学陸上競技部での活動は常に刺激に溢れ、周りにいる選手、コーチ・スタッフなど本当にたくさんの方々の支えがあって日々過ごすことができていることを実感しています。感謝の気持ちを忘れず、自分も支え合いの輪を広げていく人間になりたいと思います。お読みいただきありがとうございました。

 

本日のコラム

入野 翔太 (いりの しょうた)

環境科学学位プログラム一年

栃木県出身

真岡高校

中長距離ブロック