【十人桐色】#19 種目トランスファー対談

第8回目の十人桐色は、トランスファー(種目変更)経験のある選手をピックアップしました!

また、フレッシュな1年生と、学群生としてラストシーズンを迎える3年生で対談をしていただきました。各選手の競技との出会いや視点を知ることのできる内容になっています。ぜひ最後まで読んでみてください!

担当:池川(体育3)、中司(体育3)、真鍋(体育1)

 

◇今回のピックアップ選手◇

齊藤勇真(短距離・3年)

伊東翔吾(中距離・3年)

重山源斗(長距離・3年)

柴田涼太郎(跳躍・1年)

松田基(跳躍・1年)

渡邊寛之(投擲・1年)

 

齊藤勇真(さいとう ゆうま)

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体育専門学群3年/短距離障害/熊本・九州学院高校

渡邊寛之(わたなべ ひろゆき)

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体育専門学群1年/投擲・やり投/栃木・宇都宮高校

 

 

―トランスファー(種目の変更)について教えてください!

渡邊)僕は元々野球部でした。陸上の大会前にできる特設陸上部があって、そこで走幅跳をしていました。記録もそこそこ行きました(笑)全中の標準記録に5センチ足らないくらい。高校でも野球部に入ったのですが、自分の家と高校が遠くて練習が終わると終電がなくなってしまうこともあって、ちょっと緩めの陸上部に入りました。そこでやり投げを始めました。

齊藤)野球をやめたことは後悔しなかったの?

渡邊)ないですね。恩師にも出会えたので!

中司)やり投げは自分でやろうと思ったの?

渡邊)学校に先輩のやりがあったので、本当に軽い気持ちで始めました。折衷案みたいな。(笑)

齊藤)俺は小5でハードルを始めた。日清カップに出たくて、ハードルの方が出やすかったから。結果、日清カップ出場もできて。高校までハードルをやってたけど、高2の南九州総体は準決勝で落ちてしまったんだよね。ラスト一年は勝負できる種目で戦いたかったのもあって、楽しくやれる200mに変更した。

中司)顧問の先生からは何か言われた?

齊藤)何も言われなかったかな。自分で選んだ決断だった。自分的にはハードルをメインにしたかったけど、高さが上がることも考えて、練習も好きじゃなかったから抵抗なく移れたかな。勧められたわけではなく、自主的に。

 

―種目変更をして苦労したことは?

渡邊)体づくりは体重が軽かったので苦労しました。筑波に入って先輩方の練習を見たとき驚きました。

中司)前の種目から今の専門に繋がってることはある?

渡邊)野球みたいに球状のものを投げるのと棒状のものを投げるのは全然違うんですよね。だから逆に悪いところがやり投げの時に出てしまうときもありますね。

齊藤)繋がってるよ!インターバルの走りとか刻む感じ、リズム感が自分の中ではスプリントに繋がったと思う。ハードルやってなかったらスプリントはついてなかったと思う。

中司)200mの難しさと好きなところは?

齊藤)距離もキツさもあるし、カーブからの直線の走り方、ペース配分も難しさかな。

渡邊)駆け引きもあるんですか?

齊藤)あるね。前半突っ込む人もいるからちょっと焦るときもある。(笑) 好きなところは、カーブ抜けたところだね。みんなが落ちていくところでしめしめと思って抜いていくところ。(笑) 

中司)やり投げの難しいところは?

渡邊)正解が見えないところですかね。一人一人の良さを殺さずに、いかに自分の投げを見つけるか。下半身の連動も難しいです。自分は力を加える範囲がまだ短すぎる。力積を大きくするためにはどうしたらいいかも考えていますね。でもこれがやりがいでもあり、好きなところでもあるんです。

中司)幅跳びとか野球してるときは感じなかった?

渡邊)そうですね、あんまり考えることがなかったです。野球の場合はチームプレーだし。やり投はすごい考えますね。

中司)やり投げのことを考え始めたきっかけはある?

渡邊)外部の先生が指導してくださったのがきっかけです。最後の試合でインターハイを逃してしまって。その悔しさが今の種目を続けている理由にもなっています。

 

 

―今の種目が好きだけど、種目変更を悩んでいる人がいたらどうアドバイスする?

齊藤)種目を変更するというよりは、違う考え方ややり方を取り入れることを勧めるかな。競技が好きな気持ちを大事にしてほしい。

渡邊)一回やってみることも大事だと思いますね。陸上を続けていくうえで、記録ってモチベーションの一部になるけど、楽しいと思えることも大切だと思うので。

中司)後輩に向けてアドバイスをお願いします!

齊藤)筑波に来て、ほんとにいろんな人の支えを感じる。いろんな人と話してみることで、いろんな気づきがある。それがまた楽しいし、自分のためになっていると思う。だから積極的にコミュニケーションをとってほしいな。

中司)先輩に聞きたいことはある?

渡邊)挫折はありましたか?

齊藤)あったね。去年はベストが出なくてつらかったかな。でも悔しかったけど充実して勉強になった1年だったよ。

渡邊)充実したと思えるのはなぜですか?

齊藤)先生や先輩のアドバイスのおかげで練習の立て方とかバリエーションが広がったからかな。高校の延長で練習をしていたけど、いろいろ考えながらするようになった。去年の悔しい思いがあるから今の練習があると思う。

中司)1年終えてみてどう?

渡邉)筑波に来る前はトップレベルの選手たちは別世界の住人だと思っていました。だけど一緒に練習するようになって、追われる側ってつらいこともたくさんあったりするんだなとか、意外に人間味があるんだなって感じられました。そこがギャップでしたね。自分も頑張らないとって思います。

 

*****

今回お話を聞かせてもらった二人からは、競技を楽しんでいる気持ちが伝わってきました。自分の気持ちに素直になれたからこそ、今の競技や種目に出会えたのではないでしょうか。齊藤は、大学ラストシーズン。やっと自分の陸上が広がってきたと教えてくれました。きっと彼の強みである後半の走りで圧倒してくれると思います。渡邊は、1年目を終えてたくさんの気づきがあった分、自分自身に落とし込むまで苦労したと思います。彼らしく、じっくり時間をかけて自分の投げを見つけてほしいです。

 

伊東翔吾(いとう しょうご)

体育専門学群3年/中距離/愛媛・新居浜西高校

柴田涼太郎(しばた りょうたろう)

体育専門学群1年/跳躍・走高跳/兵庫・社高校

 

―陸上を始めたきっかけは?

伊東) 中3の時に箱根駅伝を見て、こんなにかっこいいスポーツはないと思ってサッカーから長距離(3000m)に転向したんだよね。学校に陸上部がなくて、試合だけでも出してもらえるようにお願いしに行って。

池川)箱根ってやっぱり夢を与えまくってるな!若者に!柴田は?

柴田)中学校までは野球をやっていました。最後の大会で肩を壊してしまって、高校で野球ができなくなってしまったんです。中学に陸上部はありませんでしたが(走高跳が専門の)先生に記録会に出てみないかと勧誘されて。出てみたら記録が良かったこともあってどんどん走高跳の魅力に引き寄せられて高校では陸上の道に進むと決めました。その記録会1回だけで高校の推薦ももらうことができました(笑)

池川)すご(笑) エリートやん!野球から投擲に種目変更する人は多いけど野球から高跳びってめずらしいよね?どうして高跳びを選んだの?

柴田)完全に先生のおかげですね。「お前は高跳びに向いている!」と押されて試合に出たら見事はまってしまった感じです。

池川)翔吾はサッカーから3000m、3000mから800mと2回トランスファーしているけど800mに種目変更した理由を教えてくれる?

伊東)箱根に出るために希望を持って高校に入ったんだけど、高校では3000mがなくなって5000mになるんだよね。そうしたら全然走れず、タイムも出なくて目標と現実に大きなギャップを感じた。ライバルに記録も離されてしまって。高1の県総体で惨敗したときに陸上をやめようとまで考えたくらい。そのときに先輩に800mをやらないかと誘われて、タイムもついてきたし自分にはこの種目があっているんじゃないかと思って種目変更を決意したんだ。

 

―種目変更は勇気のいる決断だと思うが、不安や心境の変化はなかった?

柴田)特に不安などはありませんでした。自分の場合は怪我で野球は出来なくなったけど、スポーツを続けたい思いはあって。そのとき走高跳に出会ってスパッと切り替えることが出来ました。

伊東)葛藤はあったよ。簡単に箱根を走るという夢を諦めていいのかとも考えたし。でも初めて800mのレースを走ってからは自然と気持ちもスッキリして割り切ることが出来たかな。やっぱり走ることが大好きだと実感した。それとともに、もっと上を目指す陸上を頑張りたいなと思って。

池川)なるほど。そこで辞めていたら、今翔吾は何してたんやろね(笑)

伊東)確かに。けど800mに転向したから筑波大に来ることが出来て、しかも選手として箱根に出る夢は叶わんかったけど猿橋のおかげで給水で箱根を走れた。あの時は泣いてしまったなぁ…。

柴田)諦めず努力を続けていたら夢は叶うんですね!

 

池川)種目変更したての時ってぐんぐん記録が伸びると思うんやけど、スランプになった時に前の種目に戻りたいなぁとか思わなかった?もしあればどうやって対処してたとかも聞きたい!

柴田)高1の冬から高2の冬まで、(スランプで)新しい種目に挑戦しようと思って三段跳を始めました。

一同)みんなトランスファーしまくってるな(笑)

柴田)三段も楽しくて記録も出たけど、走高跳が忘れられなくて。基礎をサボってきたから1から先生と見直しました。そのおかげもあって、3年目で7試合連続ベスト更新、インターハイも優勝することが出来ました。

伊東)2年から3年でどれくらい記録伸びた?

柴田)19cmです!

伊東)やべえ! トランスファートランスファーで戻ってきたんやね!やっぱ近道ってないと思うな!柴田の話聞いたら。行き詰った時は新しいことに挑戦するのがいいよね。

池川)翔吾はスランプとかの時どうしてた?

伊東)親が「楽しくやってる?」とか、「あまり記録にこだわらず楽しいのが一番」って言ってくれて、気持ち的にも常に楽に陸上が出来た。記録で悩むこともあったけど自分が楽しんで陸上をしてるだけで喜んでくれる人がいるから。そのことを思い出して気楽にやることを心掛けてきたかな。

池川)翔吾は今年で学生ラストシーズンだけど、1年生の柴田に3年間を通してのアドバイスとかあったら教えてください!

伊東)恐れ多いわ!(笑) けど競技で悩むと一人で抱えるのは辛いから、他ブロックと仲良くしてた方が絶対いい!

柴田)翔吾さん、跳躍ブロックの先輩と仲いいですよね!

伊東)藤森(藤森俊秀・走高跳3年)とか内山(内山朋也・棒高跳3年)とか翔遥(井上翔遥・短距離3年)とかめっちゃ仲良くしてもらってる!同期の女子と喋れるまでに俺は3年間かかってしまったけどな(笑)

一同)爆笑

柴田)僕ももっと人脈広げておきます!

池川)逆に柴田から翔吾に聞いて見たいこととかある?

柴田 )試合前に気をつけていることありますか? 僕、結構試合前に遊んで試合のこと気にしないタイプなので聞きたいです!

伊東)試合の10日前から不要な外出は控えたりしてたかな。けど考えすぎてあかんことが多かったから3年の秋から釣りに行ったりして柴田みたいに試合のことはあんまり考えないようにした!

 

―トランスファーして良かったですか?

伊東)めちゃめちゃ良かった!じゃないとここにもいないし仲間にも出会えてなかった!箱根も走れたし!

池川)箱根走る夢もある意味では達成したと思うけど、今の次の目標は?

伊東)目の前の目標では4月にある記録会でベストを出すことかな!

池川)応援してる!柴田はどう?トランスファーして良かった?

柴田)はい。良かったです!今の選択に後悔はしてないです。

池川)じゃあ今の目標を聞いてもいい?

柴田)足を怪我してるのでまずは怪我を治して、自己ベスト跳びます!

 

重山源斗(しげやま げんと)

【個人ページはこちらから】

体育専門学群3年/中長距離/岐阜・中京高校

松田基(まつだ もとき)

体育専門学群1年/跳躍・三段跳/山形・山形中央高校

 

―トランスファーのきっかけ、理由は?

重山)小2から中3までずっとサッカーをやってて、サッカー少年でサッカーしかやりたくない!みたいな感じだったんだよね。中学の時に駅伝部の先生に走ってみないかと誘われたりもしたけど、本格的に駅伝部には入ってなくて。中2の時に体験入部って感じで、本当にやってみるくらいの気持ちで走ったら、チームのメンバーが強いこともあって全中駅伝8位入賞してしまって…。(笑)もしかしたら駅伝で勝負できるんじゃないかって考え始めた。高校から県の強豪校への進学を決めて駅伝をやり始めたって感じ。

真鍋)今、サッカーをやりたいとかないですか?

重山)今もやりたい!観るよりする方が好きだから(笑)自慢じゃないけど、トレセン(地域の選抜チーム)にも選ばれていて、駅伝で入った高校からサッカーでも勧誘があって迷った。でも体が小さかったからサッカーでは勝負できないかなぁみたいな…。中学までボールがないと走るのは好きじゃなかったし、高校もただ走るだけじゃないから面白いなと思って、3000m障害を専門種目にしたんだ。

真鍋)松田は?

松田)僕は、走幅跳から三段跳へのトランスファーです。中学には三段跳はないので走幅跳を専門にしていて。遊びで三段跳の真似を廊下でやったりしていました。高校に入って本格的に三段跳をはじめて、幅よりも三段の方が競技成績が良くなっていって、インターハイも3年で優勝して。筑波大学には三段の推薦で入ったこともあり今はほとんど三段しかしていません。

真鍋)遊びからっていうのは分かるかも…。自分もそうだったから(笑)

松田)中学で幅跳び、高校で三段って結構みんなすると思うから、これがきっかけっていうのはないかな。

重山)やってたら、いけるんじゃね?って感じ?(笑)

松田)元々三段跳をやろうと思ってて、遊びでやってみていけるなって自信がついて…。(笑)

 

―3年生から1年生へ経験からのアドバイス

松田)ほかの種目をやりたいなって思ったことないですか?

重山)僕は逆にずっと長距離種目をやってて、ただ淡々と走るのがつまらないと思っていたから、変化がある種目に憧れたというか…。今3000m障害やってて、ずっと同じ種目やってるとマンネリ化してくるから1500mとかもしてみたいと思う。意外と脱線してみると、そっちで見つかることもあったりして。実際3000mを速くするために他にどういう要素がいるか考えたとき、1500mのスピードも要るし5000mのスタミナも要る。そう考えると、色々脱線した先に伸び悩んだ時の競技力向上のヒントがあるかなって。しかも筑波はいろんなことできるところだから、軸は持って沢山脱線して最終的に自分のとこに戻ってきたときに良い結果が出るんじゃないかなって…。

松田)僕は三段やってて、飽きちゃうっていうか、他の種目(走高跳など)をやったときの方が楽しいなって思うときあるんですけど…。練習を楽しめないときって、別の種目をやったりしてリフレッシュした方がいいですか?

重山)ずっと同じことをして煮詰まっちゃうとどうしてもモチベーションが下がって練習を頑張れないから、寄り道してみようって考えてもいんじゃない?

真鍋)重山さんから松田に対して聞いてみたいことはありますか?

重山)三段跳をずっと続けてこられた自分の信念みたいなものはある?

松田)高校の先生が三段跳の県記録を持ってて。三段が専門の先生のもとに進学したこともあって熱心に教えてもらって、記録も1年→2年→3年と伸びていって楽しかったんですよ。教えてくれる人がいたから続けられたって感じです。

重山)指導者の存在は大事だよね。頼りやすいし。

 

 

―伸び悩んだ時の対処法は?

重山)絶賛伸び悩み中なんだけど、今までやってたところとは全く違う方向からアプローチしてみるとか、あとは伸び悩むと楽しくなくなってくるから、楽しむ目的を変えるというか…。記録を出すことが陸上の楽しいところだけど、そこは一回置いておいて知らない知識やトレーニング方法を得るにはどうしたらいんだろうって考えてる。結構調べることに面白さを感じるんだよね。価値を一つに縛らずに他のところでも楽しめるようにしている。

松田)僕は練習で跳べない日とかは、どうして跳べないんだろうって考えるよりも先に行動してみるタイプですかね。練習を楽しめるとパフォーマンスも上がってくるタイプなので、友達を巻き込んで勝負したり、そうする中でテンションも上がってパフォーマンスも良くなっていくことが多いです。

真鍋)テンション上がってパフォーマンスも上がるってすごいな…。(笑)

松田)最近はアップでキャッチボールしたりサッカーしたり、遊びで高跳びやってみたりして、モチベーション上げてから本練習に入るようにしてるかな。

真鍋)練習する前のモチベーション大事だよね。

 

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対談の様子は以上になります。

今回の投稿は以下のメンバーが担当しました。

*写真は一部合成しています。ご了承ください。

左から

池川博史(投擲3年)

中司菜月(短距離障害3年)

真鍋綾萌(投擲1年)

次回記事にもご注目ください!!