【十人桐色】#19 『結局のところコロナ禍で学んだこと』澁谷 侃

 

 

初めまして、跳躍混成ブロック走高跳パート2年の澁谷侃(しぶやなおし)と申します。ただの一部員でありながら、ありがたくもこのように自分の文章が載る機会を頂戴し、非常に緊張しながらキーボードを叩いております。

 

依頼を受けましたのは昨年の暮れのことでしたが、さて、この機会にどのような事を書いていこうかと考えていきますと、ああでもないこうでもないと煩悶致しまして結局直前まで一文字も進みませんでした。私は競技部には珍しく他学(医学類)の所属ですので、そのことに関連したことでも書こうか、いや、過去には医学群生対談や、薬師寺さん、川瀬さん(共に医学、2021年3月卒)、松岡さん(医学6年LJパート)などの個人コラムも載っており、今更私が書くこともないだろうと感じ、それなら、コロナ禍の新入生だった者にしか書けないものにしようと思い立ち、このタイトルのようなことに行きつきました。

 

さて、2019年末から世界に暗い影を落とし続けている、新型コロナウイルス感染症による混乱も丸1年以上が経ちました。大学に入学した2020年4月頃、私はつくばには来ていたものの、全国的な緊急事態宣言などもあり、部活動とは…という以前に、世界とは…この世とは…これからどうなるんだ…というなんともセンチメンタルな状況でした。7月頃に授業の一環として初めて筑波大学の陸上競技場に足を踏み入れたのを皮切りに、その頃からはどのような対策をすれば感染リスクを減らせるのか、ということも徐々にわかり始めてきておりましたので、人が外で運動するような機会も増えつつありました。しかしながらT DOMEや4トレといった屋内施設は使用禁止であり、活動内容も以前とは異なっていたものであったようでした。その後は公認記録を取る機会の再開や、課外活動としての部活動の再開、競技会の実施などと進み、先日には制限付きながら4トレの使用再開など、使用できる施設が増えてまいりました。私にとってそのような施設は最初から使用できないものでしたので、存在しないのと同義であり、使用が再開され、その施設に足を踏み入れるたびに「こんな施設が筑波大にあったなんて…やはりこの大学は凄いなぁ…」という感想を抱いておりました。

 

しかしながら、私がこの1年でなによりも強く思ったのは、ここ筑波大学陸上競技部の良さは、その設備の充実さもそうですが、何よりも「人」にあるということです。ろくに活動もしていない私風情が、このような表現をするのは非常におこがましいことですが、どうかご容赦ください。これは、設備が使えない、その後使えるようになる、という経過を経験したからこそわかったことであります。2020年4月に入部し、「競技場が使用できない」という競技者としてはこれ以上ない最悪な状態にあっても、Teamsでのミーティングや木越先生(跳躍・混成ブロックコーチ)、竹入主事(当時)との連絡、今後の見通しに関するきめ細やかな通知などを通して、「これからどうするか、これからどうなっていくのか」という“先”の状態が、右も左も分からない新入生にとって、容易に想像のつく状況でした。これは7月頃に競技場の利用が再開してからも変わりませんでした。今何ができる(できない)のか、これからどうなるのか、自分は何をすべきなのか、ということが明確であり、鬱蒼とした樹海のようなコロナ禍の中であっても進行方向を誤ることはありませんでした。さらに、できないならできないなりに、できる最大限をするためには何をすれば良いのかということを追求しておられるのです。密を避け、消毒を適宜しながら練習を行うためにはこのように動けば…、トレーニング場が使えないのならこのように代用して…、のような事です。施設が魅力の筑波大学で施設が使えなくなってしまったら、もう、そこに魅力はないのか。いや、そうではなく、構成している組織・集団が泰然自若として存在しており、工夫をしながら前進している事こそが本質的な魅力である。そのように感じておりました。

 

筑波大と同じような競技場、トレーニング施設、研究施設を兼ね備えた平行世界の他大学があったときに、ではそちらでも良いかというと、そうだとは思いません。HJパートにはタータン、高マット、バー、支柱があるだけではなく、木越先生と諸先輩方がおられ、同期・後輩がいるからこその環境だと思っております。豪華な設備が使えなくとも、凄い。徐々に設備の使用が可能になっている今は、さらに凄い。部活動がコロナ以前と同様に行える頃は、もっと凄い。そういうことだと思いました。

(2020年第7回筑波大競技会にて、HJの先輩方と)

 

非常に長い文章になってしまいましたが、或るコロナ禍の新入生が感じたこととして受け止めていただけましたら幸いです。私自身も競技部を構成する一員として邁進して参ります。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

(宮城県大会の会場付近の思い出の場所)

 

◇今日のコラム◇

澁谷  侃(しぶや  なおし)

医学群 医学類 2年

宮城県・仙台第二高校

跳躍・混成ブロック 走高跳パート

データバンク委員会