【十人桐色】#07 『圧倒的感謝』 井上 翔遥

『 圧倒的感謝  』

 

みなさんこんにちは。短距離4年の井上翔遥です。

今回の記事を書くことが陸上競技部での最後の活動になるので、これまで私を応援してくれた人たちに向けてこの場をお借りして感謝の気持ちを伝えると同時に私が感じていた思いについて文章にしようと思います。

 

私は自分の内から出る競技に対する内的なモチベーションというものが周囲に比べて少なかったように思います。ここまで競技レベルの厳しい世界で自己研鑽ができたのは、応援してくれる人や期待してくれる人による外的なモチベーションのおかげだったと感じています。

正直な話、私は自分のためにする陸上競技が楽しくありませんでした。ネガティブな自分とせめぎあいながら日々の練習やレースを乗り越えてきました。そうした自分とのせめぎ合いによる精神的な摩耗が大学で陸上競技を一区切りする理由の一つです。正直、体も心も限界でした。その中で悔いなく競技人生を終えられたことを内心ほっとしています。

話は少し変わりますが、私の好きな『ボールルームへようこそ』という漫画にこんなシーンがあります。釘宮方美(まさみ)という将来を有望されていた競技ダンサーが周囲の期待や反応によるストレスで死にたいと思っていたところ、偶然にも交通事故に遭ってしまうのですが、方美は事故の瞬間自分に向かってくる車を見て笑っています。これで自分の意思ではなくダンスを止める言い訳ができると。これはかなりショッキングなシーンですが、私には少し共感する部分がありました。競技の残酷さをこんなにも過激に表現しているにも関わらず、私にはしっくりとくる部分がありました。気になった人はアニメにもなっているので見てみてください。

今思い出してもこんな思いで13年間競技を続けてきた私自身に驚いています。それはたくさんの人に支えられていたおかげだったのだと競技をやめた今、強く感じています。私が走ることによって喜んでくれたり、元気になってくれる人のためにする陸上競技が私は好きでした。 今考えると競技として日本一を目指すにはモチベーションとして不足していたのかなとも感じています。しかし私は誰かのために競技できたことをとても幸せに感じています。

最後になりますが、この13年間全てが楽しかったかと聞かれれば、必ずしもそうではありません。しかしこの13年間を私自身誇らしく感じています。最後まで走り抜けることができたのは応援してくれた、期待してくれたすべての人たちのおかげです。

これからも競技を続けるみなさんの活躍と心身の健康を願って文末とさせていただきます。

 

◇今日のコラム◇

井上 翔遥 (いのうえ しょうよう)

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体育専門学群 4年

山口県出身

西京高校

短距離障害ブロック・100m,200m,400m

トレーナー委員会