【十人桐色2026】#26「全力のアップデート」太刀川慧

こんにちは。障害ブロック4年の太刀川慧です。執筆の機会をいただきありがとうございます。多くの部員の十人桐色やリレーブログを読んで、みんないいこと書いてるな、いつか自分も書いてみたいな、とか妄想していましたが、いざ依頼をいただくと拙い文章になる予感しかしないので、先にお詫びします。

競技は110mHを専門に取り組んでいましたが、大学生活の半分くらいをジャンパー膝との格闘に費やしてしまい、ベストを更新できないまま、あっという間に4年間の競技生活が終わってしまいました。全体を通して思い返せば、まあやりきったかなと思っていますが、やっておけばよかった、やらなきゃよかったなどという後悔はたくさん出てきます

今回、執筆の依頼をいただいてから、内容をぼやーっと考えながら生活していました。卒業研究の発表をやっつけて、締め切りに追われることなく呑気に実験をしていた時に、研究室の同期で、アメフト部の友人とジムに行く機会がありました。彼が真冬だというのに、汗だくになりながら160㎏のスクワットをしているのを見て、

「俺ってこんなに全力でウエイトしたことあったっけ?」

と疑問に思いました。今回は「全力」という言葉をテーマに4年間を振り返ろうと思います。

(3年次の関東インカレ)

1年生の時、大学に入学して初めての冬季練習に取り組むにあたり、冬季練習の期分けと目的、やるべきことを、本を読んで勉強しました。自分の記憶だと、冬季練習の初めのウエイトでは筋肥大を目的にして、最大重量の70~80%で8~10回、3~5セットでメニューを組むのがよいとされていた気がします。そこから重量を上げたり、速度を上げたりして最大筋力やパワーを向上させていく、みたいな流れですよね。

当時は、この流れでトレーニングさえしていれば絶対に強くなると信じていました。実際には、「重量は他人まかせで、10回余裕でできるし3セット終わっても大してきつくない」なんてことも多々ありました。既にできることを繰り返しても強くなれるわけないのに、賢くトレーニングをしている気になっていたんです。頭でっかちという言葉がピッタリですね。3年前の自分に、

「なんで10回しかやらないの?」

「なんで3セットしかやらないの?」

「なんで重量をあげないの?」

と問いただしてやりたいです。もちろん、本に書いてあった内容が間違っているわけではありません。本当は10回ギリギリ挙上できる重量で行う必要があるわけなので。

しかし、自分が160㎏でスクワットをしようものなら(そもそもできませんが笑)、左膝のジャンパー膝が再発して、多分ぎっくり腰にもなって、2週間くらいは練習どころか日常生活に支障をきたすでしょう。「10回ギリギリ挙上できる重量」で10回3セットのスクワットをしても、膝の状態は悪化するはずです。リハビリ期間は、当然高重量のウエイトはできませんし、走ることもほとんどできませんでした。では、ジャンパー膝を発症した時点で、全力でトレーニングをすることは不可能になってしまったのでしょうか。

答えは当然ノーです。リハビリ期間は頭を全力で使って自分の体と向き合うべきです。自分自身、リハビリ期間は自分で調べたこと、先生やトレーナーをはじめ多くの人に教わったことを実践して、身体の使い方や関節のアライメントが改善されていくことを実感できて、陸上競技の楽しさを走れないながらも享受できる貴重な経験になりました。

一方で、調べたこと、教わったことさえやっておけばいいという思考に陥ってしまったのも事実です。

頭を全力で使うというのは、何もリハビリに限ったことではありません。普段の練習で「何のために」、「どんなことをするか」を考えることが重要というのはよく言われます。例えばミニハードルを置いて加速走をするとして、

「なぜミニハードルを置くのか?」

「スタート地点から何mのところに何台置くのか?」

「間隔は何mなのか?」

などというように考え出したらきりがありません。

どうやら練習の効果を最大限得るためには、常に頭をフル回転させる必要があるらしくて大変です。めんどくさがりでぼーっとしている、The保守的人間の自分にはまだまだ困難ですが、4年生になって考えながら練習するというプロセスに楽しさを見出すことができるようになりました。

ここまで書いてきて、「全力」という言葉は、使うのは簡単ですが、自分が考えていたよりもずっと大変でストレスがかかることなのだと感じました。今振り返ると、全力で陸上競技に向き合っていた時間はとても少ないような気がします。ただ、「あのときもっと全力で練習しておけばよかった」などという後悔は今だからできることであって、その時々では全力を尽くしていたようにも思います。だから、後悔ができるほど自分がレベルアップできたということにしておきます。大学の4年間で体重は5㎏ぐらい増えましたし、高校の時は出されたメニューをただひたすらにこなしていたのが、メニューにこだわりを持って練習できるようになったわけですから、4年間でゆっくりではありましたが成長できたのは間違いありません

(4年次の筑波山登山)

ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。少し考えれば思いつくような内容かなとも思いますが、自分は「全力」という言葉の重みに気づいて、身をもって感じるまで4年かかったようです。

自分は大学院に進学後、個人的に競技を続けます。この4年間は自分が成功するための土台を固める期間だったととらえて、次のステップで正真正銘、全力を尽くせばよいだけです。強くなった自分を想像するとついニヤニヤしてしまいそうですね。

こんなことを書いたにもかかわらず、もし競技場でテキトーに練習している太刀川や、弱気になっている太刀川を見かけたら、ぜひ厳しい声をお願いします。

最後に、自分に関わっていただいた人、少なからず応援していただいた人に感謝します。また、来年度の筑波大学陸上競技部の活躍を心の底から期待しています。ありがとうございました。