【十人桐色】#06 『チームの武器になるために!』上迫彬岳

 

『チームの武器になるために!』

こんにちは!筑波大学生命環境学群地球学類地球進化学専攻3年、駅伝主務の上迫彬岳(うえさこ あきたけ)です。このような機会を頂き大変光栄に思います。

突然ですが、皆さんは下記の記録を見てどのような印象を持ちますか?(全て男子選手の記録です)。

100m 1222
400m 5551
・走高跳 1m59
・走幅跳 5m29
・やり投 41m89
4×400mR 3482

どれも立派な記録ではありますが、インカレ優勝を目指すレベルのチームからするとちょっと…。いや、この際正直に申し上げます。筑波で役に立つには非常に厳しい記録ですよね!(笑)。そう、これらは僕の高校の5000mの自己ベスト(16分29秒90)をハンガリアンテーブルに照らし合わせた場合に、他種目で同等と考えられる記録です(種目は個人的にピンときやすいものを選びました(笑))。あくまで目安ではありますが、それでも間違いなく僕は2017年度入部者中、最も競技力の低い高校生でした。

《高校時代の上迫。》

 

そんな僕を入部させて筑波大学には何かご利益があったのでしょうか?

入部制限ナシというのは、インカレアベック優勝というチーム目標とは乖離した、単なる教育的配慮にすぎないのでしょうか?

3年間ずっと考え続けてきたことでした。

「僕はチームのお荷物なんじゃないか」と。

その答えが最近少しずつ見えてきたように思うので、述べさせていただきます。

 

昨年2月、僕は抑鬱と適応障害の診断を受けて1ヶ月半休部しました。ケガが原因なのですが、紆余曲折ありまして、結果として夢は諦めないのだと更なる覚悟を決める材料になってくれました。4月に復帰し、5月にプレイングマネージャー(皆の練習中はサポート、空き時間や空き日に自分の練習をするポスト)を始めました。

心情の変化を端的に申しますと、怪我をして僕が夢を叶えるのは現実的に厳しくなりました。だからこそ、叶うかどうかではなく、叶えるためにどれだけ足掻いたかのプロセスに価値を見出そうと思いました。僕は24時間のうち、『筑波大学26年ぶりの箱根駅伝出場』を手繰り寄せるために何時間掛けられているかな…と考えた時、単なるプレーヤー以外にもまだ出来ることがあると思った次第であります。

 

プレマネとして帯同した夏合宿に、思い出深い出来事がありました。ある選手が「上迫が給水渡してくれている前で垂れられない。」と言ってくれたのです。僕は単に水を渡すだけ、タイムを読むだけで、多少役に立っていると言えばその雑務をコーチ陣がしないで済むようアシストした程度。そう思っていたので大変驚きました。

その夏は皆驚異的な消化率で練習をこなしており、自分達でも理解が追いつかないスピードで成長を続けたチームは、2019年10月26日、本当に夢を叶えました。

《チームは26年振りに箱根駅伝本選出場を決めた。2列目中央で笑顔を見せる。》

 

あの時頻繁に「ズバリ、箱根駅伝に出られると思っていましたか?」という質問をされて、うまく答えられずにいました。厳しいと思っていたし、出られるとも思っていたあの感覚はなんだったのか…。

今考えるとそれは「頭では難しいと思っていたけれど、ハートでは絶対にやれると思っていた」ということかなと思います。言葉にするとものすごく恥ずかしいですが(笑)、ハートとは何なのか最近分かり始めた気がします。

怪我をするまでは夢を「頭」で追いかけようとし、怪我によってそれは無理だと結論付けられました。それでも追うのだと決めたのは、頭ではなく「ハート」だったのかなと思います。常識的に考えて、他学所属でサブマネもやりつつ、普通に試合に出る選手兼任で別個にマネージャー活動を始めるのは冷静な人間のやることではありません(笑)。そして夏合宿でタイムキーパーや給水を通し、皆が受け取ってくれていたものも「ハート」。僕なりの形で「チームを箱根に出したい」という想いを表現し、皆はそれに走りで応えてくれていたのかなと思いました。相当都合の良い解釈ですが(笑)。つまりそこでは「チームケミストリー」が起きていたように思います。

そして、そこにこそ僕が生きる道があり、筑波大学が躍進するカギがあると考えています。

僕らが勝てない理由を並べようと思ったらそれは無限にあります。でも皆の頭は勝てない理由を並べるためにある訳じゃない。頭は、ハートで追いかける覚悟を決めた目標に対して、現実的に無理な物事を現実にするために、未来や運命を捻じ曲げる手段を創造するためにあると思います。

 

スポーツは生身の人間がやることで、算数ではありません。特にそれは僕のような競技力の(相対的に)低いプレーヤーが理解していないといけないことで、僕ら(すぐには競技力でチームに貢献できないプレーヤーの意)が入部を許可されているのは、「チームが勝つために必要だから」だと捉えています。僕らは受動的に価値を与えられるのを待つのではなく、自らを必要な存在たらしめる工夫や熱意が特に求められる立場であることを理解して行動する必要があります。

このような言い方をすると窮屈な印象を与えそうですが、むしろこれはとても楽しい作業です。これをやって初めてチームの結果が自分事になり、チーム目標が達成された時の喜びは何にも勝ります。また、これらは間違っても自己犠牲ではなく、あくまで自分の練習を全力でやった上にプラスアルファでやるという前提です。体力は有限なので24時間練習することは普通難しいと思います。ゆえに、例えば今まで目的無くゲームや動画視聴に充てていた時間を、チームメートが0.1秒速く、1㎝高く遠くへ跳ぶ、投げるために使えないかと思案して行動してみる、というような意味合いで申し上げております。

《1月の勝田マラソンでは自己ベストを42秒更新する走りを見せた。》

 

僕の場合であれば、ハートで動きチームケミストリーを起こす大切さをチームに伝えることで貢献したいと考えています。ハイレベルな世界をよく知っているからこそ、頭で壁を作ってしまう選手は少なくないように思います。その時に「今は頭を使う時じゃない、ハートで前に進んで。お前なら絶対に出来るよ。」と背中を押してあげること、そしてその言葉を信じてもらえるような言動を常に続けること。最後にはそういう言動がどの選手もできるようになること。それこそが、綺麗事ではなくチームを勝たせるために本質的に僕が果たすべき責務だと思います。

 

これまでもこれからも、筑波大学には多くのエリートでない選手が入部します。強い選手だけでは埋められないこの環境を、他大学に比べて不利だと考えるか、有利だと考えるか。

僕らしか知らない、筑波大学には強力な武器があるのだということを証明して4年間を終えたいと思います。最後までお読みくださり本当にありがとうございました。

 

 

〇今日のコラム〇

上迫彬岳(うえさこあきたけ)

【個人ページはこちらから】

生命環境学群地球学類 3年

鹿児島県出身

鹿児島県立鶴丸高等学校

中長距離ブロック長距離パート

5000m〜ハーフマラソン

運営執行部・データバンク委員会・駅伝主務