『困難は分割せよ』
「十人桐色」をご覧の皆様こんにちは。投擲ブロック4年の富永天平です。
この度は筑波大学陸上競技部の名を借りて自分の文章を掲載する機会をいただき、大変光栄に思うとともに、少し重圧を感じております。
私は普段、自己顕示欲を満たすべくSNS上でトリッキーな投稿をすることが多いです(笑)。
しかし今回は知人や家族、未来の自分に見られても恥ずかしくない文章を心がけたいと思います。
その分無難で退屈なコラムになるかもしれませんが、少しでも誰かの役に立てれば、という思いで書くので最後までご覧いただけると幸いです。
私は陸上競技部ではハンマー投パートに所属しており、体育専門学群生としてはスポーツバイオメカニクス研究室(身体運動を力学的観点から解明しようとする研究分野)に所属しています。
ハンマー投という複雑で難しい種目を、力学の力を借りて突き詰めていく、というのが私の目指すスタイルです。というより、才能と根性が平凡な分、頭を使うことでカバーせざるを得ない、というのが正しいかもしれません。
結果として「考えすぎ」、「裏をかく」、「細かいところが気になるのが僕の悪い癖」という長所かつ短所を備えたハンマー投選手が生まれました。
今回はそんな私がこれまでの競技生活で得た「考え方のコツ」を書きたいと思います。
「困難は分割せよ」という言葉をご存じでしょうか?
私はこの言葉に中学校の国語で、物語の登場人物の言葉として出会いました。どうやら元ネタはフランスの哲学者ルネ=デカルトの「検討する難問の1つ1つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分割すること」という言葉のようです。
彼らは、「千里の道も一歩から」というような「量的な分割」を言いたいのではなく、「人間が空を飛べないのは①翼がないこと、②上肢の筋力に比べて体重が重すぎること、の2点が原因だ」というような「質的な分割」を言いたいのでしょう。
「質的な分割」によって困難な課題を克服しようというのは別に特別な考え方ではありません。アスリートも自分のパフォーマンスを考えるときにはより細かいパフォーマンス要素に分割して考えているはずです。
例えば、「技術はいいんだけど、フィジカルがね・・・」と考えている投擲選手がいるとします。「フィジカル」という大きな課題にそのまま取り組むと、いろいろなトレーニングに手を出すことになって時間も体力も足りそうにありませんね。
そこで、「フィジカル」を「筋力・スピード・体格」などの要素に分けてみます。その結果「筋力」が課題だと判明した場合、部位はどこでしょうか。「上肢・体幹・下肢」のうち「下肢」の筋力が足りないとしたらトレーニング種目は何にしますか。「下肢の筋力」といっても、「ゆっくりと大きな力を出す・瞬間的にそこそこ大きな力を出す」といったパターンがありますね。後者を鍛えることがパフォーマンス向上に効果的だと考えたなら、クリーンやスナッチといったウエイトリフティング系種目等を重点的に取り組むと良いでしょう。
どうですか?「フィジカル」という漠然とした課題を、ひたすら分割して考えることによって特定のトレーニング種目にまで落とし込むことができましたね。ここまで来ればしめたもので、後はトレーニング場で時間と体力、モチベーション、それから安全性(重要!)の許すかぎりクリーンなりスナッチなりに励めば良いのです。
このように、一見困難な課題でも、それを構成する要素に細かく分割し、課題を困難にしている真の原因を突き止めてしまえば克服可能になるはずです。私は困難に直面したら、困難なポイントをひたすら箇条書きで羅列し、ひとつずつ分割していくことでなんとか乗り切っています。皆様もお試しあれ。
・・・なんだか、うさんくさいビジネス書のようになってしまいましたね。誰かの役に立つと良いのですが。また、テクニック的なことばかり書いて、誰を勇気づけるでもなく、誰を感動させるでもない文章になってしまいました。この点は文才とカリスマ性のある他の部員に託したいと思います。
このような機会をくれた「十人桐色」運営メンバーの皆様に感謝します。これだけのプロジェクトを企画し、滞りなく運営していくのは簡単ではないはずです。いつもありがとう。
長くなりましたが、僕からは以上です。
「うまくいかないときは、この言葉を思い出してください。 『困難は分割せよ。』 あせってはなりません。問題を細かく割って、一つ一つ地道に片づけていくのです――」
〇今日のコラム〇
富永天平(とみながてんぺい)
体育専門学群 4年
東京都出身
東京都立多摩科学技術高等学校
投擲ブロック・ハンマー投パート
トレーナー委員会・運営執行部