【十人桐色】#06 主将ブログ 吉田唯莉

 

十人桐色をご覧の皆様、いつも筑波大学へのご声援誠にありがとうございます。主将の兵藤秋穂です。

2月から本格化している十人桐色企画も、やっと軌道に乗ってきたところです。今年はこれまでとは異なる4種類の企画を週ごとにまわしながら皆さんにコンテンツをお届けしております。

 

さて、今回の企画は「主将ブログ」第1弾。これは2018シーズンに男子副主将を務めた川村直也さん(110mH・OB)が立ち上げた企画を引き継いだもので、私がピックアップ選手と1対1で対談を行いその内容を皆さんにお伝えするものです。

今回は私だけでなく、男子副主将の小林と女子副主将の吉岡も同様にブログを更新していく予定です。

 

記念すべき第1弾は、100mHの吉田唯莉をピックアップしました!

高校時代にはインターハイを始めとする数々の大会で日本一の成績を収め、大学1年時にはアジアジュニアを大会新記録で優勝。U20世界選手権などの国際大会にも出場しています。

大学入学後は怪我に悩まされ苦しい時期を過ごしたこともありましたが、現在は4年目の活躍に向けて練習に励んでいます。

以下、ぜひご覧ください!

 

吉田唯莉(よしだゆいり)

体育3年/石川・小松商業/短距離障害・100mH

【個人ページはこちらから】

 

 

兵藤)第1回主将ブログ、今回ピックアップするのは100mHの吉田唯莉です!

よろしく!まずは生い立ち、幼少期の話について聞こうかな。

 

吉田)小さい時はこう見えてかなりやんちゃだったかなぁ。お姉ちゃんがいるんだけど、お姉ちゃんに出来ることは自分にも出来ると思ってて。

例えば、ジャングルジムのてっぺんまで登っていくお姉ちゃんを追いかけて一緒にてっぺんまで登るとか、滑り台の上から飛び降りて舌を噛んじゃって縫ったりとか(笑)危ないよね。自転車に乗ってるお姉ちゃんを一回り小さい自転車を必死に漕ぎながら追いかけてたら車に轢かれたこともある。鎖骨骨折と頭も割っちゃって、救急車で運ばれたり…。

親からしたら世話の焼ける子だったよね(笑)。

 

兵藤)今からは全然想像もつかないような幼少期を過ごしてきるんだね(笑)。

 

吉田)よく言われる(笑)。でも小学校に入ってからは割と真面目に過ごしてて、ピアノと水泳とテニスと書道と、後半は塾にも通ってた。毎日習い事だったね。

 

兵藤)そんなにいろんなスポーツやってたんだね。それで、中学から陸上始めたの?

 

吉田)中学から陸上だね。水泳を続けたいと思ってたんだけど、クラブチームがなくなっちゃって。テニスは中学は軟式になるし、高校でちゃんとやりたいと思ってたから、そう考えた時に陸上部かっこいいなぁと思って始めたんだよね。

 

兵藤)かっこいいと思ってか!最初は何の種目やってたの?

 

吉田)最初はずっと100m、200m。中学3年の時に捻挫してからは200mに絞って、そこからずっと200m専門で走ってたかな。

 

兵藤)なんか、全然イメージできないんだよね、ハードルじゃない唯莉って(笑)。中学校の陸上を振り返ってみると、どんな陸上だったと思う?

 

吉田)中学校は自分の土台とか基礎をしっかり作ってくれた場所かな。競技者としてもだし、人間としても、土台を形成してくれた中学の陸上だったかのしれんね。

 

兵藤)なるほどね。いい中学校時代やね。ちなみに中学の時の最高成績ってどんな感じ?

 

吉田)全然だったよ。全中もJOも予選落ち。全国大会に出られたのは3年の時だけだったし、県も優勝できず。200mでも勝ったり負けたり。中2までの成績は皆無やね(笑)

 

 

兵藤)次は高校の話を聞いていこうと思うんだけど、高校選びの話とか聞いてもいい?

 

吉田)ずっと強豪の私立に入学しようと思ってて願書も準備してたんだけど、提出の数週間前に(最終的に進学を決めることになる小松商業)高校の顧問の先生に、「お前は小松に通え!」って言われて。

小松は自分が住んでいた金沢市からは遠かったし、かなり負担は大きかったんだけど、同じ小中卒で活躍していた短距離の先輩が小松商業の出身で。「お前も先輩を追って小松に行け」って言われて。それで小松商業に行こうって方向転換した感じかな。

 

兵藤)すごいね、そんなにスパッと決められるもんなんだね…!

 

吉田)そう!その言葉でその先生を信じていこうって思ったんだよね。

 

兵藤)もう、運命的な感じだね。中学までは短距離を専門にしてたわけじゃん?高校でも短距離専門で頑張ろうって思ってたの?

 

吉田)まさにその通り。短距離しかやったことなかったし、そのつもりだったんだけど、たまたま教育実習に来ていたハードルの先輩と顧問の先生にハードルを勧められたんだよね。才能を見抜いてもらったじゃないけど、たまたま教育実習生のハードルの授業で跳んだ時に「ハードルしてみたら?」って言われて。そこから試合に出始めた感じかな。高1の6月くらい。

 

兵藤)そこからずっとハードル1本なんだね。ハードルは始めた当初から上手いことハマった感じ?

 

吉田)結構上手くハマったね。初めて出た国体で7番になって、その次の年のインターハイは4番、秋のユースで優勝して。3年のインタ―ハイ、ジュニアでも優勝できたんだよね。ほんとにとんとん拍子というか、先生に恵まれたって感じかな。先輩の存在も大きかったかも。

 

兵藤)出る大会全てで結果残してきてるのは率直に凄すぎる…!そんな順風満帆な競技生活の中でも苦労したこととかはある?

 

吉田)そうだね、厳しい高校だったっていうのが1つあって、1年生の頃は「なんでこんなところ来たんだろう」って思ったりとかもしたし、学校が遠かったのもしんどかったね。5:30には毎日家を出て、帰ってくるのも21:00過ぎとか。

 

あとは、結果が出始めたからこそ、負けれないっていう不安やプレッシャーを感じることもあった。強くなって環境が変わったからこそ、「強い選手って気が強そう」とか、「内面が怖そう」とか言われるようにもなったし。もともと強い選手じゃなかったから、内面もいい選手になりたいなって思ったよね。

 

挫折で言えば日本選手権のフライングは結構印象に残ってて。その前の試合で追い風参考だったけど高校記録の13“39を超える13”38のタイムが出て。風も良くて競技場も長居で、ベストコンディションだったのに走れずじまいだったのは、どうしたらいいかやり場のない気持ちだった。それが一番の思い出かも。

 

兵藤)そんなことがあったんだ。それでも、その後のインターハイではタイトルを獲得、日本一になるわけだよね?インターハイで優勝するまでの向き合い方、過程ってどんなのだったのかなって、普通に気になるんだけど…?

 

吉田)2年のインターハイが終わってから、「絶対来年は優勝する」って気持ちが強くなって、そのために毎日ハードルと接しようって思ったんだよね。ハードルを跳ばない日も、帰りの電車の中で動画見るって決めてたりとか、それはずっと継続してたね。

 

冬期練習の苦しい時には、腕に「インターハイ優勝」って書いて練習したりとかもして、その時は勝ちにめちゃくちゃこだわっていたと思う。

 

兵藤)やっぱりあるよね。高校の時ってそれに向かってめちゃくちゃ頑張れるしパワーでるみたいな時が。今振り返るとよく頑張れてたなって思う時、自分でもあるよ。高校って特別だよね、頑張れる環境としては。

 

吉田)確かにね。頑張れる環境大切だよね。まさに努力できる、頑張れる環境に恵まれてたなって思うかな。

 

 

兵藤)次は大学についての話になるんだけど、筑波大で陸上をしたいって思い始めたきっかけってある?

 

吉田)やっぱり、北陸は豪雪地帯だから、冬でも外で走れる環境で陸上がしたかったのはあるかな。それで関東か関西かって考え始めて。その中でも、強い選手が集まる筑波に飛び込んで周りから色んなものを得たいと思った。谷川先生がハードルの日本記録を持っていて、まさか先生に指導してもらえるとは思ってなかったなあ。インターハイが終わった後に本格的に考え始めた感じかな。

それこそ小中高と同じ道を進んでいた短距離の先輩の後を追い続けることも考えたんだけど、自分の行きたい道を貫こうと思って。高校の野球部の顧問の先生が筑波大を推してて、大学見学や両親の説得にも力を貸してくれたことも大きかったかな。

 

兵藤)話聞いてると、向上心の塊って感じやね。それだけの成績を残してたりする中でも周りから何かを得たいって思う人ってなかなかいないよね。誰にでもできることじゃないよ。

入学後も、それこそアジアジュニアとか世界ジュニアで結果を収めて、結構順調に滑り出した感じなのかなって思うんだけど、自分で振り返ってみるとどう?

 

吉田)あの時は悩むことなくて、自己ベストも出たし、自分の中でもやりたいことをみつけて軸をぶらさずに練習してた。とにかく1年生の時は自信があったかもしれない。今までやってきたこと、今やってることにもね。

 

兵藤)やっぱり自分の軸を持つことは大切だよね。

 

吉田)つくばに来てめっちゃ思うね、それは。

 

兵藤)軸がしっかりしてたからこその活躍だったんだろうね。その後についてはどう?

 

吉田)その後はケガが続いて、振り返ってみると自信がなくなったなって。自分のやってることに対しても自信がないし、周りと比べることも多くなって。自分が自信を持っていたこともみんなにとっては当たり前だったり、周りのみんなの事を凄いって思っちゃって。

そんなこと考える必要もないし、自分が努力すればいいだけなのに周りと比べてちっぽけに見えて。そしたらどんどんできなくなって、環境にいるのもつらくなったりとかしたかな。

周りの選手を見過ぎて自分が分からなくなったのと、あとは周りを取り入れようとし過ぎたのもあるかも。あれもいい!これもいい!ってなって、感化されて終わりというか、それで分からなくなる感じ…。

 

兵藤)それ、筑波大ではありがちなことよね。

 

吉田)いや!ほんとみんな気を付けた方がいい!(笑)

 

兵藤)これもいい!あれもいい!あれ?自分って何がしたかったんだっけ?ってやつ。これはほんとに共感できる。

 

吉田)自分が分からなくなった、自信がなくなった。それでも競技が続けられてるのは、周りが助けてくれるこの環境のおかげとも思う。

 

兵藤)怪我とか周りの影響とか大変なこともありながら、最近の唯莉は調子戻って来てるんじゃないかなって感じてるんだけど、学生最後のシーズンを迎えるにあたって変わったこととか、考えたこととかはあった?

 

吉田)1年で自己ベスト出して、2年は良くても準決勝くらいの選手になっちゃって、3年は試合出場ゼロ。それでも4年では改めて日本一獲りたいなあって。

 

この1年しかないって考えると、もう一度日本一を獲りたいって思いは強くなった。怪我との向き合い方についても、どう付き合うかに目を向けた方がいいなって思ったのが、自分がどん底から上がれた理由かな。

 

考え方を変えたらやるべきことが明確になって、「自分はこれが出来ればいいんだ」って目標がクリアになった時があったんよね。そこで気付けたみたいな感じで。それがあるから継続して練習できるようになったし、「まだまだ全然ダメだった!自分!伸びしろしかないやん!」ってそう思えたから、この1年間、来年のためにリハビリ頑張ろうって考えられた。今年は3月から記録出していけるように今は日本一奪還に向けて、これまでやってきたことを発揮出来たらと思ってる。

 

兵藤)今の話聞いたらさ、獲れないはずないだろ!って思ったよ。唯莉、4年目これは活躍するだろって。1人の同期としてね(笑)。

みんな頑張ってるし、応援したいって心から思える仲間ばっかりだからね。楽しみだね、来シーズン。

 

吉田)頑張りたいね。一緒に頑張れる仲間がいるって強いと思うよね。ほんとに。

 

 

 

兵藤)最後に、唯莉が大切にしてることや言葉があれば教えてください!対談のためにめちゃくちゃノートに書いて話したいこと準備してきてくれてるみたいだし(笑)。言いそびれとか、話したりないことどんどん話してね(笑)。

 

吉田)これは話したいと思ってたんだけど、中学から今まで毎日「いいこと日記」書いてる!

9年間、毎日その日にあったいいことを書き続けてるんだよね。

 

兵藤)それ面白いね!いいこと日記?これ、めっちゃプラスになりそう。

 

吉田)つらいことって忘れるけど、いいことは「そうそう!こんなこと思ってた!」って思い出せるんよ。見返した時に、当時の良いことを思いだして楽しくなったりするし、今から始めても、10年後とか、「大学の時こんなこと考えてたんだ」って思えるだろうし、めっちゃおすすめ!

 

兵藤)振り返った時に思い出すものっていいよね。練習日誌とかもそうだけど、読むといろいろ思い出したりするもんね。これはぜひみんなにおすすめしたい!

 

吉田)大切にしてる言葉は2つあって、1つは高校の先生からもらった「勝っておごらず負けて腐らず」っていう言葉で。今でも印象的なんだよね。勝って一喜一憂するのでもなく、でも今は負けて腐る時でもないって。まさに人生やなって思う。そういうのが理想の選手だな、そうなりたいなって。

 

もう1つは、「いちばんたいせつなことは、目に見えない」かな。星の王子様に出てくる言葉で、ずっと大切にしとる。小学校の先生にこの本をもらってからいちばん大好きな本で、アパートに飾ってあるんやけど、読み返すたびにもっと、中身を大切にしようって思う。素直な心も大切にしたいって思う。特に今日、自分のことを振り返ってみて、忘れかけてたなあって感じた。

 

兵藤)いやあ、いろんな話が聞けて楽しかった!ぜひたくさんの人に読んでもらいたいね。

 

吉田)自分のことについて話す機会なんてめったにないから、たくさん話させてもらった!

 

兵藤)いい話聞かせてもらったわ!ありがとう!今年は一緒に全カレの表彰台登りたいね。

 

吉田)立とう!アッキーと表彰台!(ノートにメモしてくれました。)

 

兵藤)最後はこの代で活躍しまくろう!今日は本当にありがとう!

 


【あとがき】

対談をするにあたってこれまでのことを詳細に振り返り、ノートに書き記してきてくれました。

高校時代には世代トップを走り続け、大学入学後は様々な困難がありながらもひたむきに自身と向き合い努力を重ねている選手です。

彼女の活躍は、その裏の深奥に巡らされた思考によって支えられたもので、1つ1つの積み重ねが生んだ産物であるように思います。

「勝っておごらず負けて腐らず」という言葉を体現し、強い向上心を持つ唯莉だからこそ、集大成となる4年目のシーズンは「やっぱり吉田唯莉は強い」と思わせる活躍をしてくれるのではないかと心の底から感じました。

4年生のシーズンは唯莉と一緒に最高の活躍を見せたい。自分自身の決意もより強くなったように思います。

 

 

筑波大学陸上競技部には心から応援したくなる選手がたくさんいます。

個人競技の陸上競技、極論1人でも競技することは出来るかもしれません。それでも誰かと一緒に頑張ることが出来たら、それは本当に心強いと思いますし、一緒に頑張る仲間が心から応援できる人なら、その相乗効果は何倍にもなるのではないでしょうか。

この主将ブログ(副主将ブログ)が、心から応援したいと思える仲間の輪を広げていくことに繋がると願って、第1弾の結びとします。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました!

 

文責:主将 兵藤秋穂