こんにちは。僭越ながらコラムを書かせていただくことになりました、跳躍混成ブロック2年の新開俊智と申します。
私は自身の競技において、深く考えること、学ぶことを大切にしています。何か目的や理由があって大切にしはじめた訳ではなく、おそらくそういう性格のせいで気づけば今に至ります。言ってしまえば(というかよく言われる)「小賢しい」人間なのですが、その「小賢しさ」を私は大切にしています。
早くも私は2年生になり、4月には新入生を迎えました。高校から大学に上がると、「~~を勉強して競技に生かしたい」、「文武両道で~~」と耳にすることが多くなるように思います。特に筑波大学は体育系の国立大学と言うことで、学力の高さや研究面の業績と競技での活躍といったことがよく取り沙汰されます。
その一方で普段の練習は自身の経験や感覚に基づいてステレオタイプ化していたり、授業等で知識を得てもそれを実際に生かせていないといった人も多いのではないのでしょうか。今回は競技において「頭を使う」ことについて、私の考えを綴りたいと思います。
さて、突然ですが皆さんは「美味しい」と日常的に言いますよね。ただそれを英語で言おうとすると「yummy」,「delicious」,「tasty」,「palatable」等、微妙にニュアンスの違う、たくさんの表現があります。このように、私たちの認知、表現は言語に大きく依存していると思います。
これと似たことがトレーニングでも言えます。皆さんは「バーベルを担いだ状態、もしくは自重で行う、立位で下肢の3関節の屈曲、伸展を繰り返す運動」を何と呼ぶでしょうか。・・・正解はスクワットです。動作を見ればすぐに分かると思うのですが、皆さんに「スクワット」という知識、語彙があるからこそ、普段の会話では先ほどのような表現をせずに済みます。
では、「フラット接地」、「腹圧」、「ヒンジ動作」、「トリプルエクステンション」、「ダブルニーベント」・・・・・と言ったら何を指すか分かりますか?だんだんイライラしてきましたよね。でもこんな難解な用語が「スクワット」のように当たり前のように使えるようになったらどうでしょうか? 何気なくやっていた動作の名前が分かったり、こういう考え方があると知ったりすることは、私たちの引き出しが増えることを意味し、新たな可能性、伸びしろを与えてくれます。
例えば解剖学を学ぶことで、何という筋肉がどこに付着し、どんな作用を持つかを知ったとします。それによって初めてその筋肉を意識し、力を入れたり抜いたり出来るようになるかもしれません。さらにはその部位を鍛えるにあたってはどんな種目がよいか、どうストレッチするのが効果的か、といったことまで見えてきます。
こう考えてみると、学びの成果は意外と身近なところで役に立つと感じていただけるのではないでしょうか。
一方で、注意すべきことも多いように感じます。
まず把握しておかなければならないのは、科学にも限界があることです。対照的な結果を報告する論文は多数ありますし、現時点での「正解」や「常識」もいつ淘汰されるか分かりません。また「無知の知」というように勉強すればするほど分からなくなることもあります。(「~~じゃない?知らんけど。」を多用するようになりました。(笑))
また、科学的知見を得ても、それが簡単に競技力向上に結びつくとは限りません。我々のパフォーマンスは単なる要素の集合ではないからです。部分を意識し過ぎて全体を見失う、質ばかり重視して量がおろそかになる、あれもこれもと手を出して途方に暮れる、など陥りがちなエラーはたくさん考えられます。
大切なのは私たちがきちんとリテラシーを持っておくことだと思います。先述した対照的な論文だけでなく、奇をてらったトレーニングや○○メソッドなど、ネット社会も相まって私たちを惑わせる情報は多く存在します。「ファンクショナルトレーニング」と謳っていても何が「ファンクショナル」かは目的によって異なりますし、「これとこれ、そしてこれも鍛えろ」「これを1日何g摂れ」という目標をすべて達成するのは現実的に不可能ですよね。あれこれ手を出して、どれも中途半端になったり、一貫性がなかったりしたら本末転倒です。時間も体力もお金も限られている中、自分に出来ること、目的と理由が分かるものを適切に選び取る必要があると思います。
そこで求められるのが自分の「軸」であり、それを形作っていくのは結局実行、経験のプロセス(○○やってたけど結局これに落ち着いたな・・・的な)でしょう。また、迷ったときにその軸を支えてくれるのがコーチの存在なのではないでしょうか。
生かすも殺すも自分次第ですが、自分の結果に自分で責任を負えるということが、考えて練習することの大きな意義だと思います。
ここまで小賢しく長々と書き連ねてきましたが、現在の私に偉そうに言えるほどの競技力があるわけではありません。ただ、何も考えずとも結果を出してくるライバルに勝つためには、頭も武器にしていくことが私の勝つ道だと思っています。スカラーアスリートとしてロールモデルになれるよう、「小賢しく」精進していきたいと思います。このコラムが同じ志を持つ方の参考になれば幸いです。
◇今日のコラム◇
新開 俊智(しんかい はやと)
体育専門学群2年
福岡県・福岡大学附属大濠高校
跳躍混成ブロック・混成パート
トレーナー委員会