こんにちは。筑波大学陸上競技部主将の樋口隼人です。
この度はブログをご覧いただきありがとうございます。
今年1年間で部員の皆さんには、なぜ貴重な時間を使って陸上競技に取り組むのか、その環境として本競技部に身を置く意義と伴う責任について繰り返し投げかけてきたつもりです。これが僕自身の競技と存在意義に対するテーマでもあったからです。
どこまで届けられたかは分かりませんが、僕の言動含め今年一年間の運営が来年以降のチームのあり方に対してポジティブなものであればと思います。
主将としての任期の最後に皆さんに問いかける機会をいただいたので、引き続き同じ問いを投げかけたいと思います。
まず一つ目、私たちはなぜ陸上競技をするのでしょうか。
非常に大きなヒトという種の一部という視点で見れば、時代の最先端の個体として生まれてきた時点で私たちはある種の大きな役割をすでに果たしていると思います。次はその役割を後世に託して、後はくたばるのを待つだけなのかもしれません。それが自然の流れだとすると、人生そのものに大それた使命なんてないのだと思います。「人生は一度きり」という言葉も、自分の人生に地球の命運が乗っているわけではないからこそ、好きに自由に経験しろという意味だと思っています。
ここで私たちの陸上競技はどうでしょうか?
陸上競技は生活に必須ではありません。それに莫大なお金がかかるし、多分健康になるためのエクササイズ負荷は超過しているし、人生を豊かにするはずだった時間と自由を奪っていくことさえあります。生き物としてはもちろん、健やかに生きていこうという視点からしても、とても不思議な営みです。
だからこそ私たちは常に問い直すべきなのです。
私たちはなぜ陸上競技をするのでしょうか。
答えはきっと人それぞれです。それでも根幹は一緒で、自分がやりたいからに落ち着くのかと思います。損得なんて度外視で、ただただやりたいからです。
だから陸上のためにお金も時間もかけるし、練習後のオールアウトが見えていても一歩踏み出すわけです。もしそれを持たず、人に言われてただただきつい練習を続けることだけにこれまでの陸上人生を終始してきたのであれば本当の変態だと思います。
筋肉は自分では動きませんから、みなさんが自分の頭でやると決めてやってるんですよ。誰かにやらされてるわけじゃないんです。
それだけ意思の力というのは大きなものです。本気でやると決めたら大体のことはできるものです。
ここで次の視点、競技部に身を置く意義と責任です。
ここからは個人はなくチームという枠の話になります。
みなさんは並外れた意志力で、人生の価値ある多くのものを犠牲にして、そのリソースを現在進行形で陸上競技に割いています。その原動力はここまで話した通り個人の視点で「陸上競技がしたいから」であるとします。
でも、ただ、競技をしたいなら自分で空いた時間にやればいいだけです。わざわざ地元を離れて、苦労して筑波大学まで進学せずとも、地元のトラックで走って、投げて、跳んでの練習に本気で取り組めば記録は向上できるでしょう。でもそうはせず、本学に入学し、授業がある中でもみんなで時間を合わせて同じ場所に集まって練習しているのです。そこに私たちが見出している価値は何でしょうか?
ここに、チーム全体の目標に向かうこと、すなわち「インカレでの総合優勝」が関わっているのかもしれません。
去年まで、競技部に在籍する学生にはインカレでの優勝経験がありませんでした。私自身も下級生の頃、目標を聞いていて上の空だったのを覚えています。
しかし今年はそこが大きく違います。優勝した瞬間の熱気も感動もあの現地にいた全員が共感したものです。応援だって大きな負担を払って駆けつけてくれています。それでもそんなことを忘れてしまうような熱狂が、価値があの瞬間にはあったと思います。
これは僕たちが競技部に所属したがる意味の確信に近いものなんじゃないかと思います。
まとめると僕たちは陸上がやりたいから陸上をやるし、競技部を選択するのは在籍する仲間との活動に感動や価値を見出しているから。本競技部における、その最たる例がインカレでの総合優勝なのでしょう。
意志力の話に戻ります。やりたいと思ったことの大抵のことはできます。しかし、そのために何が必要なのかは試行錯誤の中で理解していかなければなりません。今までの私たちはインカレで優勝したいといっても、どこに行けばわからない状態でした。前に進みたいのに、そもそも前がどっちかわからないようなものです。
岡山での全日本インカレを通じて明確にどこに優勝があるのか、その瞬間に何を思うのか、私たちは身をもって体感したわけです。
意思を向かわせるべき具体的な方向は見えたと思います。あとは意志を持つ人数の問題です。僕はこの意思を持つことそのものが競技部に在籍する責任だと思います。陸上競技は最終的には個人種目なので、その道程では一人一人の意思がバラバラに見える時もあるかもしれません。でも、それは全く悪いことではありません。磨き抜かれた多くの意思が同じ方向を向く一瞬に必ず大きな相乗効果を生みます。
一人一人が潜在的に陸上競技をやりたいと思うのと同じように、競技部の仲間と強くなりたい、次は俺たちも総合優勝したい、男女の総合を両方取りたいと本気で思うことができればきっと日本一だって遠い目標ではありません。ぜひ本気で志してほしいと思います。
この情熱をできる限り多くの人に伝え続けること、それがこの一年間の僕が主将としての取り組んできたことの全てです。
現状在籍する部員数は250名ほどですが、チームの目標は今いる部員のものだけではありません。過去に筑波大学陸上競技部に身を置いた全員の意思が積み重なったものです。その思いの先端を走る皆さんのこれからを、もうしばらくだけ見守らせてもらおうと思います。
最後に、普段から本競技部をご支援してくださる皆様へこの場を借りて感謝を述べたいと思います。ありがとうございました。今後とも本競技部へのご支援、ご声援の程よろしくお願いいたします。

関東インカレマニキュア

旧倉庫にカラスがいた

異国のフレンズ

福井 目の前で日本記録
2025年度 筑波大学陸上競技部主将 樋口隼人