【十人桐色2026】#38 「感謝と恩返し」 苅部光紀

はじめまして。

中長距離ブロック2年の苅部光紀です。今回、「十人桐色」に執筆させていただく貴重な機会をいただき嬉しく思います。文才もなければ日本語すら怪しいので、拙い文章となりますが暇つぶし程度に読んでくだされば幸いです。

最初に、自己紹介させていただきます。茨城県笠間市出身、水戸市にある緑岡高校から筑波大学体育専門学群に入学しました。陸上競技は中学生の時に、大会に出場していましたが、本格的に始めたのは高校生になってからです。それまでは、9年間ソフトテニスをしていました。専門種目は800mです。始めたきっかけは1500mでのスピードを鍛えたいと考えていたことと、高校時代の先輩に練習が楽だと言われ始めました。後者の方がより影響したかもしれませんが、練習は全く楽ではなくむしろきつくなる一方でした。

さて、今回書く内容は関東インカレについて書いていきます。筑波大学としては、女子が総合優勝、男子が総合3位となりました。私個人としては800mに出場させていただき、0.01秒の僅差で優勝しました。筑波の応援は競技開始前から、一際目を引くものであったことを今でも覚えています。インカレには1年時から出場させていただきましたが、予選敗退、準決勝敗退と結果を残せずにいました。そんな私がどう成長し、優勝までたどり着いたのか書いていきます。

先ほど申し上げた通り、大学生活1年目には両インカレに出場させていただきました。関東インカレでは、何も知らないで走り、負けてしまい同種目の準決勝や決勝、さらには他種目の同期が活躍している姿を見て自分の無力さを痛感しました。また、中長距離ブロックのミーティングからインカレに出ることの意味、背負うものの大きさを知りました。自分は何をしたかったのか、なにもできないのなら、自分より適任の人がいるのだから出ない方がよいのではと思うようになりました。悩んでいるうちに僕の憧れである木佐さんに今後の相談をしていました。

僕はインカレに出ない方がいいんじゃないですかね?

心の底からふいに出た言葉に気づけば涙を流し、謝ったことを今でも覚えています。負けない選手になるとその時に誓い、日本インカレに臨みました。結果は準決勝敗退ですが関東インカレの時と比べて、成長したのではないかと思っています。しかし、本競技部の目標となっている男女総合アベック優勝を達成するには敗退の二文字はあってはならないことです。全国で戦うにはまだまだ時間が必要であると再認識し、一年目のインカレは幕を下ろしました。

その後の練習では、単にやるだけであった練習から試合で勝つために練習を行うようになりました。主観と客観の比較、調子の波の把握、練習の目的や強度、そして、自分の感じたことをなんでもやってみることにしました。周りの人が走行距離を増やすことやスピードをつけると考えているときに、私は何をやろうか考えていました。ふとベッドで横になっているときに

「競歩って走りに活かせるのでは?」

と謎の自信と面白さが芽生えとりあえずやってみることにしました。当然、競歩の知識はありません。競歩の先輩である徳野さんからドリルを教わり、同期で競歩を専門としている山上と話し合う中で、走りの中で分からなかった上半身と下半身の連動や脱力など自分に必要な動きの要素が分かるようになり、動きの精度が向上したと思っています。一年前と現在で比較したときに、格段に動きが良くなっていました。自分でもびっくりしています。また、怪我や体調不良がなく、練習が継続できたことも走りの感覚が良くなった要因であると思います。

順調な生活を送っていた自分にもある問題が発生しました。今シーズンの初戦から自己ベスト近くで走ることができましたが、なぜか走ることの楽しさが失われ、だんだんと走ることが嫌になりました。練習の目的を考えることはできても、なぜ自分が走っているのかわからなくなりました。楽しかった陸上競技が何も考えられなくなり、日が経っていくだけ、流れ作業のようになりました。肉体はあっても魂がない状態。学生個人選手権ではそれが現れ、いつの間にかレースが終わっていました。悔しさはあっても練習をしようとは思わなくなり、それに気づいたとしてもどうしようもなかったです。レースを走ることも嫌になり、選考会すら走りたくなかったです。そんな時にいつもお世話になっている先輩に悩みを相談しました。

うまくいかない時とか迷っている時こそやっぱスポーツの本質あるんじゃん?

その言葉を受け、何かが吹っ切れた気がしました。楽しいと感じることがいいのではなく、試行錯誤の中に自然と楽しくなるのだと思いました。とりあえず挑戦して失敗したらそれまでと考え、再び競技場に戻ることができ、選考会に臨みました。「負けてもいいから挑戦」の気持ちで大学に入ってからやったことのないフロントランで勝ち、関東インカレ出場の権利をいただきました。

大会当日は緊張していましたが、レース前にはその緊張が抜けました。応援してくださる皆さんがいたからです。予選、準決と慣れていないフロントランをしましたが、無事に1着で決勝に進みました。決勝の相手には憧れの木佐さんもいて、800mでの初対決が関カレ決勝と最高の舞台。負けたくないが、イメージの中ではどうやっても勝てない中、招集所の前で大会期間中に付き添いとしてサポートしてくださった金井さんから背中をたたいていただき、中長のみんなに送っていただきました。肝心のレースは正直、ほとんど覚えていません。しいて言えば、前に出て加速したときに、みんなが背中を押し出してくれたのだろうと思ったら単純に背中を押されていたということくらいです。運が良かったが0.01秒差でも1位は1位。嬉しかったのと同時に自分だけの勝利ではないと感じ、急いでみんなの下へ行きました。本人より喜んでくださる人、泣き崩れる人などで戸惑いましたが自分はそれだけのことをしたのだと実感し、幸せであることを感じました。

改めて振り返ると多くの支えがあり、自分が存在していることを理解しました。練習中のアドバイス、試合の応援、サポート、相談に乗ってくださる先輩方、同期、私生活を支えている香山さんからいただいた家具、家族のサポートなど。数えだしたらまだまだあることは明らかです。本当にありがとうございます。

この先、より大きな壁に直面することが容易に想像できます。その都度、迷うことはあっても自分を見失わないように競技を行っていきます。そして、感謝と恩返しの心でこれからも競技を行っていきます。長くなりましたがここまで読んでくださりありがとうございます。