【十人桐色】#34 『「自分」に勝つために』早瀬知穂

『「自分」に勝つために』

 

皆さん、こんにちは。

跳躍混成ブロック・走幅跳パート2年の早瀬知穂です。

今回、思いがけずこのような機会を頂戴し、少々驚きましたが、せっかくの機会ですので、自分自身のこれまでを振り返りつつ、少しでも何かをお伝えできればと思います。

 

私が陸上競技を始めたのは、中学校に入学して陸上部に入部してからです。理由は単純で、個人競技なので周りに左右されることがなく、自力で県大会出場くらいは狙えそうだと思ったからです(笑)

 

初めて出場した大会では、100mと走幅跳に出場したのですが、そのときの走幅跳は、助走練習中にスパイクが手に刺さってけがをした上に(どうしてそうなったのかは割愛します)、結果は「記録なし」でした。普通だったら「もう走幅跳なんてやりたくない」と思ってもいいところですが、私は走幅跳を続けました。このままでは終われない、次こそはできる、と根拠のない自信がわいてきたのです。むしろ、今まで100mと走幅跳以外の種目に挑戦したことがありません。それもそれでどうかとは思いますが(笑)

 

周囲に跳躍専門の知識を持っている人もいなかったので、中学生の頃は強豪校の選手を真似したり、本を読んだり、できる限りのことをしました。記録も順調に伸び、中学2年生の夏頃から全中出場を意識するようになりました。砂場の縁の木枠に全中標準の印をつけ、そこを目指して我流の練習をしました。(今となってはその我流が癖になって足を引っ張っているのですから、皮肉なものです。)しかし、中学2年のシーズン中は記録が全く伸びませんでした。それでも私はひたすら練習を続けました。

 

そして、中学3年生で念願の全中出場を果たすことができました。「全中出場を目標にしていたら、出場しかできないぞ」と、皮肉交じりに先生に言われていたのですが、本当にその通りでした。2本連続でファール、最後の1本は数十センチも手前で踏み切り、記録だけは残す、という情けない試合内容で終わりました。しかし、ここでも私は、このままでは終われない、次こそはできる、と競技を続けたわけです。

 

部活動だけでなく勉強や委員会活動も頑張りたいと思った私は、県立高校に進学しました。毎日とても忙しく、授業の予習・復習、小テスト、課題などに追われ、それらに加えて委員会活動や部活動を行っていたので、心身ともに休まることがありませんでした。そのせいか、高校時代は事あるごとにけがや故障に悩まされました。

 

高校時代、競技を続ける中で最も苦しかったことは思うように記録が伸びなかったことです。高校時代は2年生の春に100mのベストを更新してから、個人種目では一度も自己ベストを更新することができませんでした。試合で8位以内に入り、チームに貢献できても、ベストを更新できたというチームメートから、自分は一人おいて行かれているような気がしていました。

 

【高校時代、蛍光ピンクのジャージ(通称:ピンジャー)を着ていた】

 

今となってみては、自分が間違ったものさしで他人と自分を比べて、勝手に劣等感を覚えていただけです。それに気づき、他人と比べるのはやめました。今では「勝ちたい」の対象は、他人ではなく、過去の自分や妥協しようとしている自分へと変わっています。大学に入り、同じ「自分」でも、トレーニングや日常の生活習慣の変化の積み重ねによって過去の自分とは確実に異なる、ということや、他の人にとっての「良い」や「正解」が必ずしも自分にとっても「良い」や「正解」であるとは限らないということに気づいたからです。

 

陸上競技は個人競技です。ですから、自分自身に意識を集中させることは簡単です。しかし、それが最善の方法かと問われれば、そうではない、と私は思います。自分にとっての「最高」にたどり着くためには、やはり他者の存在は欠かせないと思うのです。チームメートやコーチといった自分以外の人は、新しい視点や考え方を与えてくれます。自分以外の人に向けられたアドバイスやちょっとした言動にも、自分に生かせるヒントが隠されていたりもします。

 

幸いなことに、私は自分の視点や視野を広げてくれる仲間や先生方に非常に恵まれてきましたし、今もそうです。競技を続ける中で出会った人たちが、様々なアドバイスや動きをもとに試行錯誤し、トレーニングを重ね、試合でどう戦えるのかを試すことの面白さに気づかせてくれました。そして、この面白さこそが、どんなに記録が伸びなくても、けがで思うように練習ができなくても、大学に進学してもなお、私が競技を続ける理由です。

 

まずは4年前の自分に勝つこと。それが今の私の目標です。それとともに、今まで私が周りの人から受けてきたように、私も周りの人に何かしらのきっかけやヒントを与えられるようになりたいと思っています。

 

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。なんの面白みもない、一陸上競技者の身の上話ではありましたが、これでさえも、どなたかの心に少しでも響けば幸いです。

 

 

〇今日のコラム〇

早瀬知穂(はやせ ちほ)

体育専門学群 2年

埼玉県出身

埼玉県立浦和第一女子高等学校

跳躍混成ブロック・走幅跳パート

競技会委員会