池田昌史さんからバトンをもらいました菅野航平です。短長パートの先輩としていつもお世話になっています。昌史さんは誰よりも視野が広く気配りができる人で、人の幸せを自分のことのように喜び、困っている人には親身になって寄り添ってくれます。彼の優しさに甘えてしまわないようにしていきたいですね。たまに突拍子もない行動や発言をかますところも昌史さんの武器です。この間行われた筑凸4では高校2年以来の自己ベストを出し、関甲信での4×400mRでは4走を駆け抜け優勝させ、有終の美を飾りました。なんとも浪漫に溢れた競技人生です。
(前回担当、池田のブログはこちら)
胡蝶の夢というお話を知っていますか?新型コロナウィルスでの休校期間中に見つけた漢文です。端的に内容を話すと「主人公は蝶になり、空へと舞っている夢を見て『これは本当に自分が蝶になった夢を見たのか』それとも『蝶が見る夢の世界で自分は生きているのではないか』分からなくなってしまう」というものです。
夢の中にまで自我を持ち込み、夢と現の区別が曖昧になってしまう話は「パプリカ」という映画の内容に似ています。この映画のキャッチコピー「夢が犯されていく-。」は何処となく不気味ですが、興味をそそられますね。両物語ともぜひご覧になってみてください!!
8歳から大学に入るまでの私の競技人生は、もしかすると夢の世界だったかもしれません。
中学生の頃から少しずつ結果が出るようになって、高校ではちょっぴり名が知れ渡るようになりました。学校で会う友達や先生に「おめでとう」や「すごいね」と言ってもらえました。その一方で、結果が出るにつれてある違和感がつきまとうようになりました。
「あなたから陸上競技をとったら何が残る?」
私はこのセリフを誰かに言われることが、現実世界に引きずり下ろされた気分になりそうで何より怖かった。及ばずながら受けた取材や記事で発した私の言葉は“ある程度陸上競技でうまくいったから”多少は耳触りの良いものとなっているだけなのですから。もし私が他のスポーツで、ましてやスポーツという括りすら超えたフィールドで同じような発言をしても誰にも響かないでしょう。
何も卑屈になっているわけでも、斜に構えているわけじゃない。結果を残したというだけで、評価され、讃えられ、ありきたりな言葉も正当化される夢の世界で私は酔いしれていたことに薄々気づきながらも、陸上競技を払えば味気のない現の自分と向き合わずに逃げて、競技で結果を出す自分こそが現の自分だと言い聞かせていただけなのです。それゆえに空虚な中身と自尊心が広がっていくばかりでした。私もまた、2つの物語のように夢と現の区別が次第につかなくなっていきました。
ここに入部し日々を過ごす中で、如何にしてこの競技活動で陸上競技以外の経験と能力を得られるかを考えました。自分の挫折や絶望的な経験、強い者の嘯く言葉と這い上がろうと励む者の情熱。それら全てを反面教師や鑑にしてようやく私の夢と現が切り離されていきました。
タイムや競技成績なんて額縁みたいなもので、いずれは廃れるしその絵に魅力がなければ惹かれはしない。酸いも甘いも知り、他を干渉も貶すこともない余裕さと寛大さを抱き合せたしなやかな人たちを、このリレーブログも含めここでたくさん見てきました。
夢に溺れず、夢を叶えられるように現の世界を精いっぱい生きたいと強く思います。
おあとがよろしいようで。次回は山田那央(なお)です。2個下の後輩で私と同じく400mH選手です。一般入試で入学した那央は、受験勉強のブランクなど物ともしないくらいに自己ベスト更新を続けています。2年も離れているというのに的確な言語化能力と陸上競技に対する身体的・精神的な考え方は圧巻です。私も恥ずかしながら那央に学ばせてもらっていることが多々あります。そんな私の鑑であり魅力的な練習相手である那央が見ている世界とは一体どんなものなのか、のぞいてみましょう。では、またどこかで!
貴重な時間をありがとうございました。
菅野航平(かんの こうへい)
体育専門学群 3年
宮城県/仙台第一高校
短距離障害ブロック/400mH
データバンク委員会