【十人桐色2024】#7「Noblesse oblige」遠山莉生

7月に第5回世界デフ陸上競技選手権大会が台湾で行われ、弊競技部、投擲ブロックの遠山莉生(体育3)が日本代表として出場。見事、銅メダルを獲得しました。

今回は、遠山によるコラムです。


 

この度、先日行われた世界デフ陸上に続き、来年に100周年記念大会を控える東京デフリンピックについて執筆をさせていただくことになりました。

ついでに、僕と言う人間についても述べることができればと考えています。

少々スタートが堅くなりましたが、参りましょう。どこで読み終わっても大丈夫なような文章構成なので、空き時間、練習中、ブロック集合中(たぶん、よくない。やめてください。)などお手隙の際に目を通していただければと思うわけであります。

 

1.デフとデフリンピック

デフとは「聞こえないひと、あるいは聞こえにくい人」を意味する用語であり、デフ+オリンピックを組み合わせることで「デフリンピック」という意味になります。こちらは夏季、冬季に分かれており、4年に1度開催されるという面ではオリンピック同様の仕組みとなっています。参加資格についても、単に聴覚に障がいがあれば参加できるというわけではありません。聞こえがいい方の耳の平均が55dB以上の障がいを有しているものに限られます。日本における聴覚障がい者認定の基準は両耳聴力が70dB以上ですのでデフリンピックの参加基準は厳密には聴覚障がいでなくとも参加できるということになります。

前回大会はブラジルのカシアスドスルにて、次回は2025年11月15日(土)から11月26日(水)まで東京の駒沢オリンピック陸上競技場にて開催されます。

(なお11月26日(水)は私の誕生日でもあります、祝って欲しい切実に。競技場の電光掲示板で誕生セレモニーでもやってくれないかな。
誕生日≧デフリンピック?←=を含んでなお、気持ちは誕生日に傾いてるのよくないこれ。)

取り乱しました、アスリートに欲は無用であります。

歴史は意外にも長く、1924年に夏季大会が、フランスで、冬季大会は1949年にオーストリアで開催されていることから、来年の夏季デフリンピック東京大会(2025年)は100周年記念大会な訳です。
なぜこんなにも歴史があるのにも関わらずあまり認知度が普及されていないのか、その大まかな理由として第一に考えられるのがパラリンピックに含まれていないことにあると考えられます。

パラリンピックが障がい者スポーツの祭典であることは誰もが周知の事実であると思います。オリンピック、パラリンピックはほぼ同時期に開催されることから、共に特集が組まれることもあり認知度の普及につながっていると考えられます。パラリンピックは義足や、車椅子を用いるため視覚的に競技の特性がわかりやすい傾向にあると考えられます。

しかし、デフリンピックは聴覚障がいであるため見えにくい障がいである聴覚の特性からオリンピックとの相違があまりはっきりしないことを考えると、このように自分たちから選手の情報や、経歴などを広め認知普及活動を行うことで応援されるよう内面から見てもらう機会を増やすことでより認知してもらえるのではないかと感じます。現に筑波大学陸上競技部を卒業された先輩方にデフリンピックの出場を目指している方や、先日行われた世界デフ陸上に出場された方も数人いらっしゃいます。そういう意味では、筑波大学はデフアスリートにとって比較的身近な環境だといえるのではないでしょうか。

また、来年の初の日本開催にあたって各地のデフ陸上の先輩方や、ボランティアの学生が普及活動に尽力してくださっているおかげで、徐々に認知度は普及されつつ、盛り上がってきている実感が湧いています。おかげさまで、競技に集中することができているので感謝の気持ちでいっぱいです。

 

2.私の学生生活と筑波大学陸上競技部

上記のように述べたとおり、私はデフ陸上の一員として活動していますが、本業は大学の学生です。またそこの陸上競技部に所属しています。
部員それぞれに役割があり、私は唯一の聴覚障がいを持つ部員として、部員との相互関係を築くことが自分の役割だと心得ています。そのために周囲へ理解してもらうことや自分なりに円滑なコミュニケーションを図ることが重要なプロセスであると考えています。逆に部員のみんなも手話を積極的に覚えてくれて日常会話から手話で話しかけてくれたり、1日で指文字を覚えてきてくれたりしたおかげで自分自身もとても充実した部活動を行うことができています。
これは部活動のみにおいて重要なことではなく、授業であったりゼミナール、ゆくゆくは社会において必要なスキルであると思います。

多種多様な場面で壁にぶち当たることが多々ありますが、壁にぶつかることができるのは、恵まれた環境にいることができるが故のことだと感じています。
1年生のころは壁にぶつかることで落ち込むことが多々ありましたが、現在は成長できるいい経験としてむしろ喜んで受け入れている変な部分があります。

社会的な意義のようなものを述べてばかりいますが一部員であり、競技者である以上は対校戦で、得点を取ってチームに貢献することも一つの目標であり、障がいというハンデを跳ね除けて健常者の中で勝ち切ることも個人的な目標です。

来年デフリンピックが近づいたらまた執筆できたらいいなと思いながら書けました!これからも、壁にぶつかることがあると思いますが、幸せを噛み締めて頑張ります!

長くなってしまいましたが、最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!部員の方は競技場か大学の中でお話しできたら嬉しいです!