【十人桐色2025】「日本一」#38立野晴士

お疲れ様です。主事の立野です。

この言葉を口にするたび、300名近い組織を預かる責任の重さを自覚させられます。主事として、粉骨砕身、筑波大学陸上競技部のために尽くす所存です。

唐突ですが、皆さんに問いたいことがあります。 「あなたは、日本一のものを持っていますか?」

この「十人桐色」を読んでいる方の中には、すでに日本一の称号を手にしている人もいるでしょう。しかし、多くの人にとって「日本一」は、口にすることさえ憚られるほど遠い言葉ではないでしょうか。

恥ずかしながら、私もその一人です。

少しだけ、私の話をさせてください。 私は幼い頃から、7歳上の姉に憧れてバスケットボールに熱心に取り組みました。小学校の「二分の一成人式」では、迷わず「プロ選手になる」と宣言しました。しかし、中学3年で受けた選抜選考会で現実にぶつかりました。そこで突きつけられたのは、才能や努力以前の「体格」という壁でした。

そうして高校から始めた陸上競技でも、順風満帆とはいきませんでした。 ベストを出しては故障し、復帰してベストを出してはまた故障する。そんな中、私はいつしか「練習さえ継続できれば、自分は誰よりも強いはずだ」という淡い幻想にすがるようになりました。

その幻想を抱えたまま、筑波大学の門を叩きました。 しかし、ここでの日々も、思い通りに走れないことへの焦りと、周りへの申し訳なさ、そして自分への失望の連続でした。理想と現実の乖離に苦しんでいた私ですが、沈んでいた私を掬い上げたのは、ある瞬間の光景でした。

それが、今年度の全日本インカレです。 女子総合優勝を果たし、競技場の真ん中で全員で宣揚歌を歌ったあの瞬間。 震えるような感動の中で、私は思いました。「自分一人の力では到底届かない日本一も、このチームなら、この仲間となら掴み取ることができる」と。

主事としてこの組織を支えていく。 私の腹が決まったのは、あの時だと思います。

もし、今のあなたが「日本一のもの」を持っていないとしても、絶望する必要はありません。この筑波大学陸上競技部に所属するみなさんは、そのチャンスを掴み取る資格があるからです。「両インカレでのアベック優勝」という頂を、このチームなら見ることができる。

ただ所属しているだけでは、日本一の称号を得た実感は湧かないでしょう。 代表選手として1点を削り出す。トレーナーとして支える。全力で応援する。得点を計算する。場所取りをする。その一つ一つのピースが揃って初めて、私たちは日本一の集団になれるのです。

競技者として「底辺」の苦しみを知っている私だからこそ、300人全員の役割を組織の力に変えられると信じています。

主将と私たち主事が先頭を走ります。 全員が一丸となって、日本一の陸上競技部を一緒に作りましょう。

1年間、どうぞよろしくお願いします。

 

筑波大学陸上競技部主事 立野晴士