『私は競技部を愛しています』
十人桐色をご覧の皆さん、日頃より筑波大学陸上競技部をご支援いただきありがとうございます。今年度主将を務めました、投擲4年の兵藤秋穂です。
2020年より始動した『十人桐色』も今年で2年を迎え、たくさんの記事を皆さんのもとへお届けすることが出来ました。毎週記事をご覧になってくださった方々、インタビューや企画、編集作業に携わってくれた部員の皆さんに心より感謝申し上げます。
昨年に続いて連載している個人コラム、実は昨年度に私が発案させていただいた企画です。約2年の間たくさんの部員に執筆をお願いしてきましたが、いざ自分が執筆する番となり何を書こうかと頭を抱えている次第です。
今回は私がこのチームで4年間を過ごしてみて感じたことを中心に書き進めていこうと思います。ぜひたくさんの方々にお読みいただければ幸いです。
昨年11月、私はこのチームの主将に立候補しその役職を拝命しました。これまで代々筑波大学陸上競技部の主将を務めて来られた先輩方を振り返ってみると、いかに私がそのあとに続くことが異例であったかを窺えると思います。私には高校時代からを含めても日本一になった経験はありませんし、あいにくこの4年間で“筑波大学といえば兵藤秋穂だ“と思わせるような大層な活躍をすることも出来ませんでした。関東インカレこそ優勝することが出来たものの、日本インカレの最高順位は7位、学生個人も2位止まりのパッとしない選手です。
ではなぜ私が主将に立候補するに至ったか、それは並々ならぬ『筑波大学陸上競技部への愛』であったように思います。私はこのチームに大きな可能性と魅力を感じていましたし、このチームの一員であることを誇りに思っていました。これだけ競技力の高い選手が集まる集団でありながらも、マネージャーや専属トレーナーを置かない選手自治の組織で、誰もが選手としての顔と運営者としての顔を持つ。こんなに高いレベルで学生スポーツに取り組んでいるチームは、全国的にも珍しいのではないかと思います。
さらには、男子も女子も、トラックもフィールドも駅伝もすべてに力を注ぎ、1つのチームとして戦っている。この部分が他大学と一線を画す筑波大学陸上競技部の武器であり、魅力であると感じています。だからこそ、我々が目指している『両インカレ男女総合優勝』は、筑波にしか目指すことの出来ない崇高で栄誉ある目標なのではないでしょうか。
このことに気付いたとき、私は心の底からこのチームの持つ可能性に魅了されました。自分たちがチームを率いる時には、その最前線で新しい景色を切り拓いていきたい。多くの部員とこのワクワクを共有したい一心で、より良いチームを目指して奮闘してきたつもりです。
振り返ると、私たちが目指してきたのは、人間力のある「良いチーム」だったと思います。部員同士のコミュニケーションがしっかり取れていて、自分たちの練習環境は自分たちで整備できる。誰もがそれぞれの立場から、チームの運営に貢献しようとしている。仲間の喜びを自分自身のことのように喜べる。そんな「人間味」溢れるチームなら、みんな競技力向上に向かって頑張り続けることができると信じていたからです。良いチームを目指すことが、結果的に「強いチーム」をつくるという信念のもとで、私たちはこの1年間を駆け抜けてきました。
様々な制限が続く中で、倉庫の清掃やPB更新者リストの共有、男女壮行会の実施や十人桐色などの活動を続け、競技力だけでない人間力・チーム力の強い組織を作ろうと取り組んできました。それでも新型コロナウイルスによって受けた影響は甚大なもので、特に部員全員で場を共有することが出来ないという問題は、チームの団結感や結束力を強める上での大きな課題を数多く突き付けてきました。練習もブロック単位で時間をずらして行うことが習慣化し、インカレの無観客開催が続く影響で、今では生のインカレ応援や試合の雰囲気を知らない部員がチームの半数を占める状態です。人と人との繋がりはどんどん希薄になっていきました。
チームで同じ場を共有することで感じ取ってきた想いや、自然と揃っていた足並みもバラバラになってしまい、やりたくても出来ないことへのもどかしさを募らせる毎日でした。この状況を打破する策を打ち出せなかったことへの後悔には、今でも押しつぶされそうになります。
結局この1年、両インカレでは男女総合優勝はおろか、故障者の続出によって優勝争いにさえ絡めない結果となりました。戦う前から都合の悪い未来がちらついていながら、その現状に向き合えなかった。我々が掲げる目標の価値を全員で共有し、同じ方向を向けなかったことに、今年1年の取り組みは集約されると思います。
言い訳じみた駄文はここまでにして、ここから先は後に続いていく後輩たちに向けて筆を執ります。
いよいよ自分たちがチームを引っ張っていくのだと意気込む後輩たちには、ぜひ『筑波大学陸上競技部』で競技することの意義や価値を見失わないで欲しいと思います。私たちが目指すのが、ただ競技力の高い選手が集まるだけの組織ではもったいない気がするのです。我々のチームは学生スポーツの可能性を広げ、学生アスリートを魅力的で価値ある存在にすることのできる組織です。そう考える所以は、冒頭に述べた我々の伝統あるアイデンティティに起因します。
なぜ全員が選手であるのか、なぜ全員で部の運営に携わるのか、入部に制限を設けずあらゆる選手を受け入れるのはなぜか、そこに自分なりの解釈を導き出してみてください。何らかの結論にたどり着いた時に、きっと今以上に筑波大学陸上競技部に対して強い愛着を抱き、このチームで勝ちたいという気持ちが確固たるのもになることでしょう。
少し脱線しますが、私には事あるごとに必ず見る1本の動画があります。2019年の日本インカレ、女子総合優勝を果たし長良川競技場に宣揚歌を響かせた時の動画です。円陣を組み、桐の葉をはためかせながら宣揚歌を歌うあの最高の瞬間の幸せを、筑波大学陸上競技部で競技するからには全員に味わって欲しいと思うのです。
きっと全員が点数という形で直接チームに貢献することは難しいでしょう。それでも全員が1人の選手としてチームに貢献する術を模索し、足並みを揃えられたなら、『円陣を組んで宣揚歌』の瞬間はすべての部員にとってかけがえのない時間になるはずです。
冷静に書き進めようと心掛けてきたつもりですが、終盤は感情に任せてキーボードを叩く自分がいました。このコラムがこれから先の黒歴史にならないことを切に願うばかりです。
私ごとではありますが、あと2年、大学院生として桐の葉を背負わせていただけることになりました。これから先は自分なりにチームに貢献できる形を模索し、学群4年間で手にすることが出来なかった『日本一』と『筑波大記録更新』の実現に向けて精進していきます。
最後にはなりますが、今年1年は多くの方々に支えられ、救われて、ここまで来ることが出来ました。日々ご指導いただいているコーチの先生方、何よりも一緒に怒涛の1年を駆け抜けてくれた副主将・主事の4人に心から感謝を表したいと思います。濃密で、価値ある4年間をありがとうございました。
今後さらに『魅力的なチーム』へと進化していく筑波大学陸上競技部を、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
筑波大学陸上競技部
主将 兵藤秋穂
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最後に、これまで投稿された個人コラムの中でも特に印象に残っている記事をご紹介します。
チームに対する想いや、自分自身の陸上競技への向き合い方、競技部に所属する自分にどんな存在価値を見出すか、きっと答えを導く道標になるはずです。(タイトルより本文をお読みいただけます。)
◇今日のコラム◇
兵藤秋穂(ひょうどうあきほ)
体育専門学群 4年
宮城県/古川黎明高校
投擲ブロック/やり投
広報委員長・2020-21年度主将